また来るんだろうな

 招かれざる客が来た。奴らは、僕がちょうどスラムダンクを読んでいた頃、天才仙道の活躍で湘北に一点差まで詰め寄った頃にやってきた。キリスト教系の信者だった。
 「人は何故老いるとお思いですか? 実は、老いて死ぬということは不自然なことなんです。ほら、聖書のここにもそう書かれているんです。ところで聖書をお読みになったことはありますか?」 どうみても信者です。本当にありがとうございました。
 涙が出てくるよ。僕は老いて死ぬことの危惧よりも湘北の応援をしたいのに、あいつらは邪魔するんだ。鬱陶しいし、まともに受け答えするつもりは無かったんだけど、つい聖書を読んだことがあるかと聞かれて「ありまふ」と答えてしまったのが間違いだった。読んだと行っても旧約はアダムとイブが追い出されたあたりで、新約はキリストが誕生するあたりで読むのをやめた。つまりまったく読んでいない。なのに言ってしまった…まあ、確か「持っています」という意味で言ったんだけど。もらったんで家にありますよって付け加えたし(読んだとは言わなかった…正直彼らの質問など上の空で早く帰ってくれないかと…)。でも冷静に考えれば、どちらにしても『ある』なんて答えは餌を与えているようなものだ。実際奴らは食いついてきた。「今度いつお会いできますか」と執拗に聞いてきた。ここで勇者は「ニーチェによれば、神は死んだと、キリスト教は邪な教えだとのことですが、その辺はいかがお思いですか?」とか「今、僕はイスラム教に興味があるんですよ。アッラーの教えこそ唯一だと思います!」とか言うんだろうけど、僕は村の若者B程度の人間なので「正直、興味ないです…」とやんわりと断っておいた。奴ら、それでも会誌は届けますと言っていた。
 とにかく宗教は怖い。信者の目はぎらぎらしている。…日本で宗教を信仰している連中はどこかカルトくさい。無信仰の国だから、殆どは生まれてから信仰しているわけではないだろうし、どちらかと言うと「大学に入ったものの全然つまらない生活を送っていた私に神が舞い降りた!」とか「色々と悩みがあって苦しかったんですけど教祖様に尽くしたら救われました!」という類だと思われる。だから信者どもは新しい生活を送る大学生を執拗に狙うんだ。泥沼に引きずり込むにはいいカモってところか。悩み苦しむ人は勝手に縋ってくるだろう。
 僕は宗教団体に加入したりしない。これは絶対に守る。大体金を払って救われるわけないんだから。何人勧誘したらレベルアップとか、合宿で修行したら云々とか、そういうのも馬鹿馬鹿しい。今後もこういう手合いは誘ってくるだろうけど、常に毅然に断る姿勢は欲しい。まあ今日は毅然に断れなかったけど。びびっておどおどしていた。へたれ。筋トレしたい。