老子 (講談社学術文庫)

老子 (講談社学術文庫)

 こうあるべきだとか、こうでなくてはいけないとか、結構疲れる。この前も悪しき看護婦に思わず「馬鹿が!」と当人に聞こえないところで毒突いてしまったけど(周りの人には聞こえたかもしれない)、これも規範を意識しすぎるから不愉快になって、アホな衝動的行動に訴えてしまったのだと思う。しかも誰もいなかったら何も言わなかったであろう、虚飾性溢れる瞬間だった。他にも「音楽はこういうものでなくては」という意識が強くて、負の一面だけを見て、あるものを退けたりしてしまう。まあ矮小である。
 でもそういうことって、でかい自然の中では大した問題じゃない。人為的に定められた規範は絶対じゃないし、もっと大きな目で見れば寛容になれるはず。馬鹿な看護婦とつまらない音楽はやっぱり腹立たしいけど、太っ腹になればこんなに尾を引いてむかむかしなくても済む。(老子は文化を否定しているから、音楽そのものを悪だとしていたりするんだが)
 僕は老子の言うことを全て信用する気にはなれない。『道』は善人の味方で最終的には悪を裁くから刑罰は必要ないとか、そういうところはあまり好きじゃない。そこまで自然を信じてはいない。でも自然という大きなものの中で、自分とはどういう存在なのかとか、人間社会ってどんなもんだとか、広い観点を与えてくれるところは好きだ。
 老子からすれば僕は愚か者だろうけど、自然の大きさとか教えてくれてありがとうと言っておく。