あほらし

ギター

 最近ギターが自分にとって大切な役割を果たしているのだと気付きました。ギターが一番熱中できるんですよ。読書や勉強でも熱くなれるんですけど、やっぱり今はギターなんだなあと。というわけでディープパープルのスモーク・オン・ザ・ウォーターのリフを練習します。これなら一弦を切らずに済みますし。

今はまっているもの

漫画:項羽と劉邦
小説:ライ麦畑でつかまえて
音楽:Deep Purple、AC DC

バレンタインには間に合わなかったし、そもそもこんなシチュエーションに出くわしたことがない。そんな妄想。駄文注意。

 やりきれねえ。毎年バレンタインが近づくと自分の不甲斐なさが津々と肺に溢れてくる。男として劣っていることから目をそらせなくなる。バレンタインなんて企業が金儲けに利用しているだけなんだぜ、のせられてんじゃねえっての、全く。と言ってみても空しいだけだ。
 今日はバイトの日で、今はコンビニで商品の補充なんかをやっている。どこからか甘いラブソングが流れてきたので、こんなことを考えてしまったわけで。
 客のいない店内で、俺は叫びたい衝動に駆られた。何を? あまりにつらく情けないことなのだが、俺はここ三年まともに女と会話をしたことがない。そりゃあ家族や同僚なんかとは話すが、どれも俺より十才ないし二十才ほど年上だ。つまり同世代の女とは全く話していない。悲しい青春である。だから俺は「やらせろ!」と叫びたくなったのである。プラトニックな関係でなくてもいい、体だけでも繋がろうよ。そう、叫びたい。
 興奮してきた頃に、あの電子的な、軽いチャイムが流れてきた。客だ。来てくれてありがとう、しかしね、一つ言わせてもらうとね、もうちょっと早く来て欲しかったんだよね。俺がこんな悲しい思考に陥る前に、来店して欲しかったんだよ。
 そんなことを思いつつも「いらっしゃいませ!」とスマイル。ここはマクドナルドじゃねえけど、作り物のスマイルはどこの世界でも必須なんだよ。
 客は十代中頃ないし後半の女、学生さんかな? ファー付きの白い冬物―熊男が着そうな、もこもことした素材の分厚いジャケット―を着ていて、被っているフードには雪が軽く積もっている。顔が僅かに見える程度で、かわいいかどうかは分からない。見える口元から判断するに、スマートだ。女子校の制服がよく似合いそうだと思った。
 彼女は一目散に漫画が置いてある棚に向かい、身をかがめたりして、探していた。棚を一通り見たあと、フードを降ろした。なんで降ろさないのかと不思議に思っていたが、忘れていたらしい。しかしどうせ降ろすなら入り口でしてもらいたかった。きみ、そんなところでやると僕の仕事が増えるんだよ。
 どうやら漫画を買いに来ただけみたいで、三冊の廉価版コミックス―三百円くらいの安っぽいもの―を持ってレジに向かった。俺もパンの補充を中止してレジに付いた。そしてもう一度「いらっしゃいませ」と挨拶した。我が店舗だけか、その系列だけかは知らないが、レジに来た客には頭を下げて「いらっしゃいませ」と言うのが掟である。言い換えれば商品を買う奴だけが客扱いというわけだ。入店時のそれは万引き抑止と印象を悪くしないための意味しか持たない。ご購入品目は漫画本三冊、計九百円ほど、まあこんなもんだろう。ただ若い女ジョジョを三冊買うのはどうかと思うよ。家で"URYYYY!"とかやってるの? もしそうなら招待してくれよ。俺も無駄無駄とか言っちゃうからさ。
 バーコードリーダーって意外と便利だよなあと思いながらレジ作業をしていると、ふと「あの…」と、声をかけられた。「はい?」 微笑を湛えてお返事しましたよ、この仕事、なめられたら負けだものね。
 「あの、美濃輪くんですか?」
 「はい?」 同じ言葉を続けて言ってしまった。間抜けだが、今度のは困惑が含まれている。君は誰ですか?
―書ききれなかったので終了―