ソルジェニーツィン『イワンデニーソヴィチの一日』読了。
電車の待ち時間にちまちまと読んでいただけだから結構時間がかかった。
ちまちま読んでいたから感動も散漫だった。
しかしこれは素晴らしい小説だと思う。
これと似ている小説は、夏目漱石坊っちゃん』だと思う。
とにかく描写が上手い。
人物の行動と心情を事細かに描いている。
さすが二十世紀でも指折りの小説家と言われるだけある。
(訳者が上手いというのもあるかもしれないけど)
あと主題について。
この作品はスターリン時代のソ連の政治的問題を描いている。
無実な人間が投獄されて強制労働させられるということ。
上層部は私腹を肥やし貴族のような生活をしていると言うこと。
これを読めば共産主義なんて儚い理想論だと分かる。
しかしそれ以上に「そんな世界に生きる個人の思想」が目に付いた。
結局神などは存在せず、今日一日が無事に過ごせることを望む。
極限に生きる人間が辿り着くのはここではないか?
いや自分もそのように生きていくべきだと思う。
今の日本は平和で、徴兵もなく餓死の心配もなく幸せなのだが、よくよく考えると人生そのものが監獄とも捉えられる。
僕は何かの巡り合わせで人間社会という荒波に放り投げられてしまった罪人なのだ。
だからこの作品に学んでこう言える。
生きるということは明日に期待することではなく今日を懸命に走り抜けることではないか、と。
主人公シューホフ達は過酷な環境下で必死に生きている。
僕はと言えば、怠惰な日々を送り、ただ死んでいないだけ。
真に人間らしいのは平和な日本に住む僕ではなく強制労働させられているシューホフ達だ。
というわけで自分も懸命に生きたいなあと思わせる作品でした。
坊ちゃんと似ていると先で書いたけど、僕は坊っちゃんよりも断然こっちが好き。
イワンデニーソヴィチの一日の方が今の僕には必要な作品…。