聴いたものと、その感想

THE HIGH-LOWS / Do!! The★Mustang

 このアルバムが発表された当初、僕は耳を塞いだ。A面だけで止めてしまった。何故か? 理由はやはりキーボードの白井さんが抜けてしまったからだ。「クリープの入っていないコーヒーなんて」といった感覚で、「白井さんのいないハイロウズなんて」と口にしていた。むしろ「肉の入っていない牛丼なんて」ほどの意味があったかもしれない。自分にとってはそれほどに存在感があった。
 おまけにボーカルの甲本ヒロトが、白井さんが脱退したことについてのインタビューで「ロックンロールって絶対四人だけで出来ると思うんだ」などと言っていたものだから、腹が立ったのだ。「ロック=制約」という考えには肯いたけれども、何も白井さんが抜けたあとに「別に五人もいらねーよ」なんて言わなくてもいいじゃないか。
 そんなわけで、その日を境にハイロウズを敬遠し始めた。未知の音楽を求めて中古屋に入り浸ったり、レンタル店では当日借り・即コピーを高頻度でやっていた。おかげでハイロウズに傾倒していた頃よりは耳が肥えたと思っている。調子に乗って「もうハイロウズなんてどうでもいいね。興味ないぜ」といった態度まで取っていた。
 つまり去年の秋口からハイロウズは全く聴いていなかったのだ。
 しかしつい最近、中古屋から流れてくる"THE HIGH- LOWS / Tigermobile"に、以前は感じなかった「良さ」を感じた。同時期にMTVでスパイダーポップのPVが流れていて、曲自体には何の魅力も感じなかったのだけれども、懐かしくなってしまった。この二つが反応を起こし、「そういえばマスタング全然聴いていなかったよなー」と考え出して、「じゃあ聴いてみるか」と行き着いた。
 偏見を捨てて聴いてみると、以前とは正反対の感想だった。一曲目のゴーンで、既にハートブレイクという感じ。あとは流れに身を任して聴いてみて、「やっぱりハイロウズはいいな」と、昔に戻った。いや、昔とは違う。昔は一つ一つの音を楽しんで聴いていなかった。歌詞の意味合いを重視していたからだ。今は前ほど歌詞に重きを置いていない。だから、今まで気が付かなかった音の面白さに気付いて、Tigermobileなんかも新鮮に感じたのだろう。ハイロウズは歌詞が命だと思っていたけれども、一つ一つの音が宝物だったのだ。
 白井さんがいたらと思うときりがない。だからもう考えない。ロックは制約だ! 白井さんが鍵盤を叩いていた頃は、今よりも制約が少なかったはずだ。ヒロトがロック=制約説を身をもって証明してくれるように祈る。遅ればせながら、第二期ハイロウズに幸あれ!